電熱線フィルムヒーターとは?仕組みや用途についてご紹介!
曇りや凍結防止のために車のリアガラスやドアミラーなどについている「電熱線フィルムヒーター」。どのような仕組みでドライバーの安全を守っているのでしょうか。またフィルムヒーターには他の種類もあり、その特徴はさまざまです。
そこでこの記事では、電熱線フィルムヒーターやITO透明導電膜フィルムヒーター、カーボンナノチューブフィルムヒーターの特徴や仕組み、用途などについて解説します。
フィルムヒーターについて知りたい方、適切なフィルムヒーターを探している方などのお役に立てたら嬉しいです。
目次
- 1 そもそもフィルムヒーターとは?
- 2 電熱線フィルムヒーターなど主なフィルムヒーター3種
- 3 自動車事故を防止!「電熱線フィルムヒーター」 まずは車のリアガラスやサイドミラーなどに使用される、電熱線フィルムヒーターについて解説していきます。 電熱線フィルムヒーターの仕組み そもそも電熱線は、電気を通すことで発熱する電線のことです。主にニクロム線などが使用されます。この電熱線を薄いプラスチックやポリイミドなどでできたフィルム基材に載せたり、金属箔をパターニングしたりして作られるのが一般的です。 この電熱線フィルムヒーターの特徴は、とても薄くて折り曲げにも強いこと。電熱線は一般的に折れるリスクがありますので、この弱点をうまく解消しています。 また一般的な電熱線製品と異なり、線状発熱ではなく面状発熱できるのも特徴です。一面すべてが早めに暖かくなります。また発熱量や形状なども自由にカスタマイズしやすいのもメリットのひとつ。 そのため各メーカーがさまざまな製品を販売しています。 デメリットとしては、電熱線がどうしても見えてしまうこと。高い透明度が必要な場面では、次に紹介するITO透明導電膜フィルムヒーターが活用されています。 電熱線フィルムヒーターの用途 電熱線フィルムヒーターが使用されるのは、車のリアガラスやサイドミラー、カメラ、光学センサーなどです。寒さや温度差によって曇ったり凍結したりする危険な部品に設置することで、運転時の「ヒヤリハット(※)」や事故などを防止しています。 ※ヒヤリハット:ヒヤッとしたりハッとするような事象のこと。重大な事故につながることもある。 ガラス部分の結露を防止「ITO透明導電膜フィルムヒーター」
- 4 薄くて軽量!「カーボンナノチューブフィルムヒーター」
そもそもフィルムヒーターとは?
フィルムヒーターとは
プラスチックなどでできたフィルムの上に電熱性のある線を置いて作られた、加熱用の素材・デバイスのこと。
特徴 フィルムという名の通り、薄くて柔軟性が高いのが特徴です。
目視で確認できるものから、ほとんど目に見えない透明性の高いものまで、さまざまな製品があります。
特徴 フィルムという名の通り、薄くて柔軟性が高いのが特徴です。
電熱線フィルムヒーターなど主なフィルムヒーター3種
フィルムヒーターはその種類によって特徴や使われ方がかなり変化します。そこで今回は、主な3つのフィルムヒーターを取り上げることにしました。1. 電熱線フィルムヒーター
電熱線フィルムヒーターとは
ニクロムなどの金属でできた電熱線を樹脂フィルムで覆い、フィルム化したものです。樹脂フィルムに金属箔をパターニングして作ることもできます。
比較的早く温度を上昇させられるので、以前から車のリアガラスなどに活用されてきました。
2. ITO透明導電膜フィルムヒーター
ITO透明導電膜フィルムヒーターとは
ITOとは、酸化インジウムにスズを加えた化合物のこと。これを使用したITO透明導電膜フィルムヒーターとは、ITOによる通電性と、可視光を通すような透明性をもつフィルムヒーターです。
その透過率は90%以上で、ITO特有のやや黒い透明膜になります。
3. カーボンナノチューブフィルムヒーター
カーボンナノチューブフィルムヒーターとは
ナノレベルで炭素をチューブ状に組み合わせて作られるフィルムヒーターです。通電すると面状に発熱する性質を持っています。
自動車事故を防止!「電熱線フィルムヒーター」
まずは車のリアガラスやサイドミラーなどに使用される、電熱線フィルムヒーターについて解説していきます。
電熱線フィルムヒーターの仕組み
そもそも電熱線は、電気を通すことで発熱する電線のことです。主にニクロム線などが使用されます。この電熱線を薄いプラスチックやポリイミドなどでできたフィルム基材に載せたり、金属箔をパターニングしたりして作られるのが一般的です。
この電熱線フィルムヒーターの特徴は、とても薄くて折り曲げにも強いこと。電熱線は一般的に折れるリスクがありますので、この弱点をうまく解消しています。
また一般的な電熱線製品と異なり、線状発熱ではなく面状発熱できるのも特徴です。一面すべてが早めに暖かくなります。また発熱量や形状なども自由にカスタマイズしやすいのもメリットのひとつ。
そのため各メーカーがさまざまな製品を販売しています。
デメリットとしては、電熱線がどうしても見えてしまうこと。高い透明度が必要な場面では、次に紹介するITO透明導電膜フィルムヒーターが活用されています。
電熱線フィルムヒーターの用途
電熱線フィルムヒーターが使用されるのは、車のリアガラスやサイドミラー、カメラ、光学センサーなどです。寒さや温度差によって曇ったり凍結したりする危険な部品に設置することで、運転時の「ヒヤリハット(※)」や事故などを防止しています。
※ヒヤリハット:ヒヤッとしたりハッとするような事象のこと。重大な事故につながることもある。
ガラス部分の結露を防止「ITO透明導電膜フィルムヒーター」
次に紹介するのは、ITO透明導電膜フィルムヒーターです。その仕組みと用途について解説します。
ITO透明導電膜フィルムヒーターの仕組み
ITO透明導電膜フィルムヒーターは、透明なのに発熱性があるという珍しい性質を持つ素材です。ITO(酸化インジウムスズ)などに電気を通すことで発熱します。可視光率は製品によって違いますが、おおむね80%以上は確保できている製品が多いようです。
近年問題になっているのは、レアメタルの価格高騰。ITO透明導電膜フィルムヒーターに使用される酸化インジウムもレアメタルの一種なので、価格が上がっており資源不足が叫ばれています。今後は銀ナノワイヤなど別の金属が多く利用されるかもしれません。
ITO透明導電膜フィルムヒーターの用途
ITO透明導電膜フィルムヒーターは、透明性と発熱性を確保したいところに利用されています。具体的には、監視カメラのレンズ部分やLED灯、ガラス窓などです。発熱によって結露による曇りを防ぎます。
発熱性のないITO透明導電膜そのものは、スマホやタブレットなどのディスプレイやタッチパネル、電子ペーパー画面などさまざまなところで活用されています。透明なのに存在している、とても面白いフィルムですね。
薄くて軽量!「カーボンナノチューブフィルムヒーター」
最後にご紹介するのは、カーボンナノチューブフィルムヒーターです。その仕組みや用途はどのようになっているのでしょうか。
カーボンナノチューブフィルムヒーターの仕組み
カーボンナノチューブフィルムヒーターは、炭素だけで構成されているチューブ状の物質で、1991年に飯島澄男博士によって発見されました。チューブ状なので太いと思うかもしれませんが、その直径はナノメートル程度。つまり100万分の1ミリ程度と、非常に細いことがわかります。
カーボンナノチューブフィルムヒーターは導電性や熱伝導性に優れており、インク状にしてフィルム基材に塗布して使用されることもあります。
カーボンナノチューブフィルムヒーターの用途
カーボンナノチューブフィルムヒーターは、非常に軽くて熱伝導性なども高いので、電熱線フィルムヒーターに代わる素材として活用が期待されています。また折り曲げにも強いので、ヒーターベストやヒーターソックスなど衣類への活用にも向いています。
通常では透明性は高くないのですが、カーボンナノチューブ部分をインク状にして薄く塗布することで、透明性を上げられるという話も。つまりITO透明導電膜フィルムヒーターの代用品としての利用も考えられるでしょう。
カーボンナノチューブフィルムヒーターの強みを深掘り!
3種類のフィルムヒーターのうち、今後さまざまな製品への活用が期待できる、カーボンナノチューブフィルムヒーター。このうちJERNANOが開発したのが、カーボンナノチューブフイルムヒーターユニット(以下「CNTFヒーターユニット」と記載)です。
その特徴は、これまでの電熱線フィルムヒーターなどと異なるものばかり。今回はその中から4つの特徴を紹介します。
CNTヒーターシステムの特徴1. 面状発熱・瞬速発熱
1つ目の特徴は、面状発熱と瞬速発熱です。このCNTFヒーターユニットは、カーボンナノチューブに電気が通ることで、面状に発熱します。しかもその発熱は、約1秒で設定温度に到達。この早さが魅力のひとつです。
CNTFヒーターユニットの特徴2. 圧倒的な薄さと軽さ
2つ目の特徴は、圧倒的な薄さと軽さ。CNTFヒーターユニットは、発熱部分であるカーボンナノチューブを保護膜や絶縁膜、センサーなどで覆っています。その全体の厚みは約5マイクロメートル。つまり0.005ミリメートルです。
そしてその重さは、1㎤あたりわずか0.001g。春夏用の衣類に使用される布地で約200〜250g、冬場に着るコート素材などで約350〜400gなので、CNTヒーターシステムの軽さがわかるでしょう。
こうした薄さと軽さから「超軽量電熱インナー」などが生み出される可能性は高いです。
CNTFヒーターユニットの特徴3. ヒーター部分が水洗い可能
3つ目の特徴は、ヒーター部分が洗えること。CNTFヒーターユニットは、丸ごと水洗いが可能です。開発時の実験では、40回以上の丸洗いに耐えています。
一般的な温熱素材は水に弱いのがデメリット。最近は手洗いできる電気毛布などもありますが、手洗い限定で優しく洗うよう指示されているものが多いです。CNTヒーターシステムは水に強いので、屋外でも安心して活用できますね。
CNTFヒーターユニットの特徴4. 低温やけど回避機能・温度制御システム
4つ目の特徴は、温度制御システムなど安全性の高い機能がついていることです。フィルムヒーターを人の身近なものに活用したとき、起こる危険のひとつが低温やけど。電気毛布を長時間使用したことで、気づかない間に低温やけどを受傷していたという事故もあります。
しかしCNTFヒーターユニットには、異常な温度を検知して通電をオフしたり、長時間の通電を自動的に切ったりする低温やけど回避機能・温度制御システムがあります。事故を防いで安全に利用できるよう、最大限工夫されているのです。
まとめ
電熱線フィルムヒーターやITO透明導電膜フィルムヒーターなど、近年はさまざまなフィルムヒーターが活用されています。それぞれの特徴を活かし、車のリアガラスや防犯カメラのガラスなど重要な部品に使われているので、意外と身近に存在するかもしれません。
その中で今後さまざまな製品への活用が期待されているのが、カーボンナノチューブフィルムヒーターです。特にJERNANOが開発したCNTFヒーターユニットは、主に衣類製品化が期待できます。今後この素材を使った製品が販売されていたら、ぜひ手に取ってみてくださいね。
その特徴は、これまでの電熱線フィルムヒーターなどと異なるものばかり。今回はその中から4つの特徴を紹介します。
CNTヒーターシステムの特徴1. 面状発熱・瞬速発熱
1つ目の特徴は、面状発熱と瞬速発熱です。このCNTFヒーターユニットは、カーボンナノチューブに電気が通ることで、面状に発熱します。しかもその発熱は、約1秒で設定温度に到達。この早さが魅力のひとつです。CNTFヒーターユニットの特徴2. 圧倒的な薄さと軽さ
2つ目の特徴は、圧倒的な薄さと軽さ。CNTFヒーターユニットは、発熱部分であるカーボンナノチューブを保護膜や絶縁膜、センサーなどで覆っています。その全体の厚みは約5マイクロメートル。つまり0.005ミリメートルです。そしてその重さは、1㎤あたりわずか0.001g。春夏用の衣類に使用される布地で約200〜250g、冬場に着るコート素材などで約350〜400gなので、CNTヒーターシステムの軽さがわかるでしょう。
こうした薄さと軽さから「超軽量電熱インナー」などが生み出される可能性は高いです。
CNTFヒーターユニットの特徴3. ヒーター部分が水洗い可能
3つ目の特徴は、ヒーター部分が洗えること。CNTFヒーターユニットは、丸ごと水洗いが可能です。開発時の実験では、40回以上の丸洗いに耐えています。一般的な温熱素材は水に弱いのがデメリット。最近は手洗いできる電気毛布などもありますが、手洗い限定で優しく洗うよう指示されているものが多いです。CNTヒーターシステムは水に強いので、屋外でも安心して活用できますね。
CNTFヒーターユニットの特徴4. 低温やけど回避機能・温度制御システム
4つ目の特徴は、温度制御システムなど安全性の高い機能がついていることです。フィルムヒーターを人の身近なものに活用したとき、起こる危険のひとつが低温やけど。電気毛布を長時間使用したことで、気づかない間に低温やけどを受傷していたという事故もあります。しかしCNTFヒーターユニットには、異常な温度を検知して通電をオフしたり、長時間の通電を自動的に切ったりする低温やけど回避機能・温度制御システムがあります。事故を防いで安全に利用できるよう、最大限工夫されているのです。