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「即暖・極薄・洗える」新しいヒーター素材を日本で広めるために。JERNANOジャパンの挑戦

昨今、電気毛布やヒーターベストなどの温熱製品がさまざまなメーカーから登場し、生活者からの関心も高まっています。
こうした温熱製品の素材として最近登場したのが、「カーボンナノチューブ」を使った新しいウェアラブルヒーター素材。この素材を中国本社を介して日本市場へ提供しているのが、JERNANOジャパン株式会社です。

この素材にはどのような強みがあり、実際にどんな製品への活用が期待されているのでしょうか。
また日本のメーカーや小売店との関わり方は?日本法人の発起人である、代表取締役の中村茂樹 様に聞きました。

新しいヒーター素材を日本に届け、さらに価値提供するため日本法人を設立

——はじめに、JERNANOジャパンが創業した経緯を教えてください。

まず親会社のJERNANOは、カーボンナノチューブ研究の世界的な権威である李清文博士と中国科学院、Lenovo Star、蘇州ナノシティの共同出資によって2011年に設立されたハイテク企業です。

私は元々、JERNANOからカーボンナノチューブを活用したウェアラブルヒーター素材「カーボンナノチューブヒーティングシステム」を輸入販売する代理店として、日本での販売に関わっていました。

実際に日本のアパレルメーカーへ販売したところ、確かな手応えがあり、JERNANO社の売上の約20%を日本企業が占めるほど。日本企業との商取引をより円滑にし、日本市場での取引を拡大するために、JERNANOジャパンが2021年7月に設立され、私は代表取締役として着任したのです。

——JERNANOジャパンができたことで、日本のアパレルメーカーにどのような価値を提供できるようになりましたか。 CNTフィルムユニットの特徴

新たに提供できる価値は主に2つあると思います。1つ目は、商取引が行いやすくなったことです。多くの日本企業は中国やアジア圏で生産を行っているため、「中国での現地取引をするから、日本法人を介する必要はないのでは」と思うかもしれません。

しかし中国は外貨の流れを厳しく監視する体制があるため、中国本社と日本企業が取引する場合は、複雑なプロセスを踏んで商取引をする必要があります。そこで日本法人を設立し、お金の流れをスムーズに改善して、商取引をより行いやすくしました。



2つ目は、製品に関するサポートが行いやすくなったことです。「カーボンナノチューブヒーティングシステム」は、アパレル製品の中に縫い込んでいるので、何か不具合があったときに販売店側で調査しにくいという課題がありました。



しかしJERNANOジャパンができてからは、きめ細かいサポートができるようになっています。例えば、顧客からアパレル販売店に「製品の電源が入らない。故障しているのか?」という問い合わせが来たとき、お客様から直接製品をJERNANOジャパンに送っていただいて、正常に作動しない原因を突き止めることが可能です。

また必要があれば、販売店を訪問して製品に関する知識面でのフォローを行うこともできます。もちろんトラブルはないに越したことはないのですが、「何かあればすぐに頼ってもらえる距離感」を実現したことで、販売店の負担が少しでも減らせるのではないでしょうか。

極薄で軽量、急速発熱、洗濯機洗い可能。常識を打破するヒーターシステム

——「カーボンナノチューブヒーティングシステム」はどのような製品で、どんな強みがあるのでしょうか。

「カーボンナノチューブヒーティングシステム」は、素材であるカーボンナノチューブの特性をフルに活かし、従来のウェアラブルヒーター素材とは一線を画すような強みを持っています。

まずカーボンナノチューブとは何か。簡単にいうと、ダイヤモンドなどと同じ炭素からできている素材で、非常に軽量かつ薄く広げられ、柔軟性や熱伝導性が高いなどの特徴があります。つまりアパレル素材と合わせて使いやすい特徴を持っている素材なのです。

カーボンナノチューブの特徴はこちら


この素材の良さを反映した「カーボンナノチューブヒーティングシステム」にはさまざまな特徴がありますが、特に強みとしてお伝えしたいのは「面そのものが急速に発熱すること」「非常に薄いこと」「洗濯機で洗えること」です。

——まず「面そのものが急速に発熱する」という点について教えてください。

そもそも従来のウェアラブルヒーター素材は、電熱線を用いたワイヤーヒーター。だから面を温めるときは、アパレル素材に電熱線をゆき渡らせないといけません。必然的にワイヤーが長くなるため、温まるまでに時間もかかります。

一方の「カーボンナノチューブヒーティングシステム」はフィルムヒーターです。電流が面そのものに流れるので、広範囲にわたって面で発熱しますし、発熱速度も非常に速くなります。

——次に「非常に薄い」という点について教えてください。 CNTフィルムユニット

そもそもカーボンナノチューブ自体が非常に薄く、厚みが10㎛(マイクロメートル)[1] 程度しかありません。よって「カーボンナノチューブヒーティングシステム」自体も、最薄部で5㎛程度と非常に薄いです。実際に製品を触ったとき、ヒーター部分があるのかわからないでしょう。

さらに非常に柔らかいのもこの素材の魅力です。従来の硬い電熱線と違って、アパレル素材になじみやすいですよ。

——そして「洗濯機で洗える」という特徴もあるのですね。

「カーボンナノチューブヒーティングシステム」は高い耐水性を有しています。よってこの素材を使用した温熱製品は、そのまま全自動洗濯機やドラム式洗濯機で洗うことが可能です。

現在販売されている温熱製品の中には手洗いできるものもありますよね。でも洗濯機で洗えるものはそう多くないので、この点で差別化が図れますし、生活者にも喜ばれるのではないかと思います。

注意点としては、他の素材を用いた温熱製品と同様に、洗う際はバッテリーなどの電源となるものを外し、しっかりと乾かしてから使用すること。またドライクリーニングや乾燥機の使用には適さないので、その点はご注意いただく必要があります。

詳しい「カーボンナノチューブヒーティングシステム」の強みはこちら


グローバルでも珍しい量産化技術を武器に、日本企業と協働して多様な新製品を開発

——優れた特徴をもつ「カーボンナノチューブヒーティングシステム」ですが、同じような製品を開発している企業は多いのでしょうか。

カーボンナノチューブやその量産化の研究は、1990年代からグローバルで行われています。ただ、もっとも早くカーボンナノチューブをフィルム化する技術を作ったのは中国の研究所で、このフィルムを量産しているのはJERNANOとアメリカ企業の2社しかありません。

しかもこのアメリカ企業は主に軍需用に開発しているようなので、ウェアラブルヒーター用にカーボンナノチューブを量産してフィルムヒーターを生産しているのは、JERNANOのみですね。

——現在はアパレル製品への活用がメインですが、今後どのような製品に活用していく予定ですか?

まだ開発中の案件は話せませんが(笑)、可能性として提示できることはいくつかあります。

現在は日常生活で使用される高機能な温熱製品や、ユニフォームなどに搭載するウェアラブルヒーターなどに活用されることが多いです。そこから派生して、例えば冷凍庫内で作業する方が利用するようなアパレル製品を開発できる可能性はあると思います。

またアパレル製品ではなく、調理家電に活かせるかもしれません。というのも、カーボンナノチューブのフィルムヒーターは、直流電流ではなく交流電流でも発熱します。よってモバイルバッテリーよりも大きなバッテリーを搭載できれば、理論的には300〜400度程度まで発熱できるのです。

この温度が実現できれば、その場に電源がなくても調理できるようなアウトドア用調理家電が作れる可能性だってあります。

この他にも、例えば宅配事業者が背負っているバッグの保温性をアップさせたり、加熱できる弁当箱を開発できたりする可能性もありますね。可能性はかなり広いと感じます。

——最後に、今後の展望について教えてください。

まだJERNANOジャパンができて間もないので、当面はJERNANOの方針や製品の構想に沿って、力添えをしようと思っています。今JERNANOが注力しているのは、AIを活用したヒーターシステムを作ること。例えば、製品を着ている方の動きに合わせてAIが温度調節するようなアパレルが登場するかもしれません。

一方で、すでに日本企業とのOEM生産やODM生産、共同開発もスタートし、実際に進行している案件が複数あるのも事実です。

日本企業の持つテクノロジーや技術力は、グローバルでも随一です。その製品力と「カーボンナノチューブヒーティングシステム」を掛け合わせ、これまでにない優れた製品を開発する一翼を担いたい。そう思い描きながら、事業を前進させていきます。

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